ADR研修ノート 「調停への誘い-始末のつけ方-」
昨日,滋賀県司法書士会調停センター「和(なごみ)」の研修会がありました。
受講しましたので,調停者登録まで,あと必要研修時間は2時間となりました。やれやれ。
しかし,折角の研修なので,感想を残しておきたいと思います。
今回の研修会の題材は,レビン小林久子さんが作られたビデオ「調停への誘い-始末のつけ方-」(日本加除出版社)でした。このビデオを観て感想を討論するというプログラムでした。
レビン小林久子さんは,現在九州大学大学院法学研究院,九州大学法科大学院の教授をされていますが,日本のADRトレーニングの第一人者です。
アメリカのブルックリン調停センターでの調停人の経験をもち,調停人養成のトレーニングプログラムを日本で実施し,アメリカで発展した調停の手法=ミディエーションを普及させてこられました。
ビデオは,調停(ミディエーション)の実演を収録したものです。実演といっても,架空の事案を演じてもらっているのだと思いますが,シナリオがあるというわけではなく,状況や人物の設定をして,後はその人になりきって演じてもらうという方法であったと思います。
当事者は,父親とその娘。大学4年生の娘が妊娠してしまい,妊娠5ヶ月になっている。娘は相手の名前を言おうとしない。また,娘は,生まれた子どもは里子に出すと言う。父親としては,そんなことは認められない。そこで,レビンさんを挟んでの話し合いがもたれた。その1時間余りの話し合いの様子が映されています。
このビデオ,私何年か前に買って持っております。が,一度しか観ていません。調停の様子が1時間余り続くわけですから,なかなか繰り返して観てみる気にはなりませんでした。
久しぶりに鑑賞して,なかなか面白かったですね。
何がって,とても感動的なドラマだなと思ったんです。
「感動的」という感想では研修にならんのでしょうが。
娘さんは,最後のほうで,「話ができてよかった。」と言いました。観ていて,私もそう思いました。この娘さんにとって,この話し合いは,いろいろな「気づき」の場であったんだなと思います。
父親への理解という意味でも「気づき」があったと思いますが,私が印象に残ったのは,娘さんが自分が身勝手なことを言っているとハッとする場面でした。
心の内面を見たわけではないので,「ハッとしたように見えた」というのが正しい言い方ですが。
娘さんが,自分の考えた将来のプランを述べて,「そうすればうまくいくんじゃないか。」と言ったとき,レビンさんは,「それは,だれにとってうまくいくということなの?」と問いかけました。娘さんは,その時に,「ハッとした」顔をして,「自分にとって…」と恥ずかしそうに言いました。この時,娘さんは,自分が「自分のことしか考えていない」ということに気がついたんだと思いました。
ミディエーションでは,「変容」ということが言われます。このビデオは,「変容」ということについて教えてくれているんだと思います。
「変容」は,ドラマティックであり,感動的です。
作り物だと言われればそれまでですが,でも,調停はドラマなんだろうなと思います。
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