北方領土外交
北方領土問題にそれほど関心があるわけではないのですが(それも問題かな?)。
ADRのカテゴリーで書きます。
ロシアのメドベージェフ大統領の国後島訪問について,昨日と一昨日の朝日新聞に記事が載っていて興味を引きました。
記事というのは,朝日新聞のコラムニストの若宮啓文さんの「ザ・コラム」(一昨日)と,元外務省条約局長の東郷和彦さんのインタビュー(昨日)です。
ロシア大統領が初めて国後島を訪問したという事態に,私などは,「ロシアも随分と無茶なことをやるな。これはやったらいかんやろ。」という程度の認識しかありませんでした。
今挙げた二つの記事には,この事態が,日本政府の外交交渉のまずさによって引き起こされているということが書かれていました。
二つの記事に共通しているのは,「不法に占拠している」という答弁を繰り返す,日本政府にその一因があるという見方です。
「ソ連の崩壊後,ロシアの軟化を求めて様々な誘い水を示してきた日本の首脳らは,実のところ『不法占拠』の言葉を禁句にしてきた。対するロシアも『領土問題はない』などと言わずに交渉に応じてきた。」(若宮氏)
この禁句を破って,前原外相ら日本政府首脳が,「不法に占拠している」という答弁を繰り返している。これが一因だということです。
「『不法占拠』が売り言葉なら,『国内視察に過ぎない』とは強烈な買い言葉ではないか。」(若宮氏)
東郷和彦氏に拠れば,2006年ごろから,ロシアはかなり真面目に北方領土の交渉を行う姿勢を見せ,日本に交渉のボールを投げ続けたということです。
「昨年9月の鳩山由紀夫首相とメドベージェフ大統領の初会談は,非常にうまくいった。…
ところが,この1週間後,政府は,ロシアが北方領土を『不法に占拠している』と明記した答弁書を閣議決定した。ロシア外務省はただちに『最も深刻な注意を払っている』という声明を出した。」(東郷氏)
昨年5月にも,麻生政権下で同様の事態があった。
「ロシア側の最高レベルから,真剣な交渉をやろうというメッセージが出されたときに,2回にわたり相手の感情をことさら刺激する発言をした。ロシア側は,日本には交渉をまとめる意志がないと受け止めたのだろう。」(東郷氏)
この昨年の11月以降,日ロ関係は急速に悪化した。そのサインはいろいろなところで出されていた。しかし,日本政府はそれに何も対応しようとはしなかった。その結果が,大統領の国後訪問であったという分析です。
なるほどなーと思いました。大変な失策ですね。ちょっと悲しくなりました。
ミディエーション(調停)のトレーニングでは,当事者が,「これだけは言ってほしくないこと。」を言ってしまうことを,「地雷を踏む」などと言ったりします(一部でしか使っていない言葉かも知れませんが)。
ことさら感情を刺激する言葉というのはあるものです。外交となると,文化的な価値観も異なるわけですから,そういう可能性も高くなくかもしれません。
感情を刺激することがいけないわけではないと思います。この人はこれを言われたくないのだということが理解できるわけですから,それも相互理解の一つでしょう。
2回もやってしまったということが問題なのかもしれませんね。
相手のいろいろなサインを見ていないのもね。
これも政権交代の余波でしょうか?…あんまりADRネタになってないかな。
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