北森鴻「暁英」
作家・北森鴻の遺作となった,「暁英 贋説・鹿鳴館」を読みました。
「読んだ」といっても,この小説は未完なので,結末には辿り着いていないのですが。
北森鴻氏が亡くなられたということを私が知ったのはごく最近のことです。久しぶりにアマゾンで同氏の小説を何冊か購入したら,その本のカバーに「2010年1月25日逝去」と書かれていました。享年48歳だそうです。
私は,5年ほど前から北森氏の小説を愛読しておりました。亡くなってから1年半も亡くなったことを知らなかったのですから,ファンを自称する資格はないのかもしれませんが,文庫になった本はだいたい読みました。
北森氏の小説(ミステリー)は,プロットが見事で,結末のどんでん返しにいつも唸らされました。
どんでん返しのすごさという点では,「メビウスレター」が印象的でした。ちょっと設定に無理があるかなという難点はありますが,二転三転する結末には,ほんとに「してやられた」感じがしました。
「共犯マジック」の結末も,「あー,そう来るか!」とある意味感動的でした。
「裏京都シリーズ」の舞台となっている,京都・嵐山の千光寺にも行きました。3年ほど前にことです。返事が届くかもと,寺の帳面に北森氏宛のメッセージを書きましたが,返事はもうもらえないということですね。
「暁英」とは,鹿鳴館を設計したと言われるジョサイア・コンドルのことです。コンドルは,明治10年(1877年)に来日し,工部大学(現在の東京大学工学部)で建築家の養成するかたわら,数々の建築物の設計を行った人物で,67歳で亡くなるまでの40余年間を日本で過ごしました。
北森鴻氏は,幕末から明治の日本を舞台にした小説を好んで書いておられるようで,「暁英」もその一つです。北森氏が亡くなられた時,この小説は雑誌に連載中でした。すでにかなりの分量を書かれており,未完とはいえとても読み応えがあるものです。
北森氏の,この時代への思い入れが伝染するのか,コンドルや鹿鳴館への興味がふつふつと湧いて来ます。未完であるが故に,本当の“ミステリー”といえるかもしれません。
しかし,最後まで読みたかったですね。
もっと書いてもらいたかった。
遅くなりましたが,ご冥福をお祈りします。
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