アメリカADR最新事情
3月2日,大阪司法書士会館で,近畿司法書士会連合会ADR運営委員会企画による講演会がありました。
大阪大学法科大学院准教授の仁木恒夫さんが,一昨年秋から昨年秋まで1年間,アメリカに在外研究で行っておられたので,そこで見聞されたアメリカのADR事情についてのお話を聞く会です。
近畿の司法書士のほか,自治体関係者や他士業の方にも来て頂き,全部で60名程の参加を得ました。
仁木先生とは,別の研究会をご一緒させていただいていて,この在外研究のお話は以前にもうかがったことがありますが,改めて非常に興味深く拝聴させていただきました。
今回のお話は,主に,アメリカ滞在中に視察された New York Peace Institute(NYPI) という調停機関についてのものでした。
調停機関の運営に取り組んでいる方にとってはとても面白い内容だったのではないでしょうか。
特に,NYPIが,調停事案の紹介を受けるために,様々なコミュニティにアプローチして知ってもらうための努力,工夫をしていることが印象的でした。
NYPIの方は諸外国での調停機関設置の手伝いもしていて,例えばポーランドでは,女性の不満が最も多く集まるところは美容室ではないかということで,そこと連携して調停の紹介をしたりしているということでした。
面白いですね。
また,NYPIの方のお話として,「合意は調停の成功を測定する基準である必要はない」という考え方が紹介されていました。
NYPIでは,当事者の合意による問題解決をめざしてはいるのですが,合意ができたから○,できなかったから×という考えではないようです。
この辺は,私も一応調停の実践に関わっていますので,よく分かります。「合意」にはなったけど,なんだかなーというものもありますし,相手方に連絡をしただけで解決してしまうこともあります(その場合には「取下げ」という結果になります)。ADRの結果というのは本当に様々です。
NYPIのその考え方はとても共感できます。
あと,調停人の養成のプログラムがとても充実しているようで,考えさせられました。
アメリカでは,調停機関が各地域に存在していたり,裁判所の建物の中に民間調停機関の事務所があったり,自治体からの助成があったり,日本の状況とはかなりインフラが違うなという気はします。
しかし,そういうインフラを整備してきたのも調停実践者であったろうと思いますので,日本の調停実践者としても,国から認証をもらうというだけではなくて,インフラを整備する努力をしていくべきかもしれません。
なかなか刺激的な,面白い講演会でした。
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