久しぶりのADR関連記事です。
10月20日,21日の2日間,滋賀県司法書士会調停センター「和(なごみ)」の調停人養成トレーニングがあり,参加しました。
今回は,「和」の事務長の太田さんが東日本大震災後に現地で相談会を行った縁で,土地家屋調査士・一級建築士の佐藤好男さんに講師にきていただきました。
佐藤さんは,震災前は福島県郡山市で仕事をされていましたが,原発事故による放射能汚染の子どもへの影響を考えて,震災後,新潟に移られたそうです。
佐藤さんは,裁判所の調停委員もされていて,土地家屋調査士会でのADRの講師も何度もされています。
「和」の太田事務長と東北での相談会で交流ができ,「震災支援のお礼に」ということで,はるばる滋賀県までおいでくださいました。
2日間で,2つのロールプレイを含めたADRトレーニングと,原発事故についてのお話も随分していただきました。そちらもなかなか聞けない貴重なお話だったと思います。
震災=原発事故から1年半が経過した今も,福島と近畿地方とでは放射線量に歴然とした違いがあるそうです。汚染により剥離した表土も,持って行くところがないために結局同じグラウンドを掘って埋めるという対処になっていたり,安心して子どもが育てられる環境ではなさそうです。とても悲しくなりました。
コミュニケーションについてのワークと交渉のロールプレイと調停のロールプレイについての感想を少し。
コミュニケーションのワークは,一方的に情報を伝えてどの程度伝わるかというものでした。土地家屋調査士さんらしく(?),図形を口頭で伝えるというワークです。
言葉で伝えるには共通のイメージが持てる言葉を使う必要がある,ということを,当たり前ですが何だか改めて感じました。
それから,送り手が話している時に,その前に聞いたことを考えていて,話が耳に入ってこず,情報をキャッチできなかったということがありました。「聞いているけれども聞いていない」ということを実感しました。
しかし,「一方的に情報を伝える」といっても,対面でやっていると,受け手の気配が伝わるのである意味双方向コミュニケーションになりますね。
交渉ロールプレイでは,私の交渉相手はかなり人の好い担当者だったので,かなり和やかに進みました。
途中,かなり付き合いが深まったという感覚を持ったのですが,なぜそうなったのかがよくわからないでいます。
相手がこちらの要求をかなり認めてくれたからということではないように思います。どちらかというと,こちらが改善すべきことにチャンネルを開いたからかなと思っているのですが,それもただの思い込みかもしれないし…。
ちょっと面白い感覚でした。
調停ロールプレイでは,最初から別席で話をするという異例の展開になりました。
裁判所の調停と違って「和」の調停では当事者が同じテーブルで話をするというのが基本なので,いきなり別席での話を余儀なくされて調停人役の方もかなり戸惑ったようでした。
当事者役のほうからは,「調停人が同席にこだわったために話合いが滞ってしまったのではないか。」という感想もあり,なかなか難しいところだと思いました。
私は当事者役でしたが,相手が調停人と話している間の待ち時間が苦痛でしたし,相手の話が何も見えないままで調停人に誘導されていくのはとても気持ちが悪かったですね。
それも私が同席が基本と考えているからかもしれませんが。
受講者は,少し入れ替わりがありましたが,12~13人で,良い人数でした。
滋賀県司法書士会会員以外の方に結構参加していただけて(徳島から来てくださった方もおられました),ちょっとした交流になり,その意味でも面白いトレーニングだったかなと思います。
佐藤先生,ご参加いただいた皆様,ありがとうございました。
佐藤先生からいただいたN95というマスク。目が細かく,放射性物質をシャットアウトできるものだそうです。「福島の事故の時は,こういうものがあることも知らなかった。使わないで済むことが一番だけれども,事故があったらこれで避難してください。」