「小説 中江藤樹」
中学3年から高校2年まで安曇川町に住んでいました。そこでは中江藤樹という人が敬われいるようでしたが,当時は何の興味も持ちませんでした。何をした人なのかも知らないまま何十年。
先日,図書館で童門冬二の「小説 中江藤樹」という本のタイトルを見て,急に興味が湧き,本を手にしました。
童門冬二氏の文章は少々くどいというか説教くさいというか,正直ちょっと退屈でしたが,読み進むうちに中江藤樹(与右衛門)という人への興味が増しました。
丁度,少し前に読んだ「天地明察」と時代が重なっているということもありました。
「天地明察」でも,戦国の世から泰平の世に移る新しい時代の武士ということが一つのテーマとして描かれていました。しかし,幕府への恭順を促す老中酒井の政策は肯定的に捉えられています。中江藤樹は,思想的にはこの政策には批判的な立場をとっており,その対比も面白く感じました。
江戸時代,「学問」といえば儒学を指したのでしょう。今の「学問」という語感とは随分違うかもしれません。西洋で謂う「哲学」ということになるでしょうか。
幕府の奨励する朱子学では,主君(その頂点としての将軍)に従順な者が善しとされている。近代的な主体-客体という捉え方でいえば,客体に全面的に規定される人間像がおかれている。これに対して,中江は,人の主体性の発揚ということを重視した。そんな風に私は解釈しました。
後に「近江聖人」と言われるようになった中江が何を考えたか,もう少し追ってみたいなと思います。
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