昨日,6月30日,大阪大学中之島センターで,ジェラルド・モンク(Gerald Monk)先生のセミナーに参加させてもらいました。
モンク先生は,ナラティブ・ミディエーションの第一人者と言われる方です。ニュージーランドで離婚等の調停人をされて,その後サンディエゴ州立大学で医療現場での調停のトレーニングを教えておられるそうです。
早稲田大学の和田仁孝先生の関係で来日しておられて,大阪大学の仁木恒夫先生がこの日のセミナーを企画されました。それに近畿司法書士会連合会の司法書士もお誘いいただいたというわけです。
参加者は,ADRの研究者,学生,司法書士,それから医療現場での調停に携わっておられる看護師さんといった構成で,人数は大体30人ぐらいだったかと思います。
私はというと,いつものことながらまるで予習をすることなく臨んだんですけど,結構衝撃を受けました。私らが司法書士会の調停センターでしている調停(通常のミディエーション)とはスタイルが少し違うのですが,これはとても魅力的だなあと思いました。
宗旨替えしちゃうかもしれません。
モンク先生の話をごく大雑把に要約すると
全てのストーリーは文化的背景に組み込まれている。異なる期待,理解,意味・意見,知覚が対立を生む。また,対立に関連するネガティブな経験はつながりやすい。
そこで,ミディエーターは,二重観察と傾聴で,隠れた事柄を見出し,尊敬や協力をするストーリーを作っていく。
それが,ナラティブ・ミディエーションの基本的な考え方ということになると思います。
プロセスの段階は,①別々のセッション ②全員参加のセッション ③フォローアップ として設定できるということで,今回は,①のロールプレイをしていただいたようです。
この,①別々のセッション,では,主に,それぞれの当事者の希望や目標を確認するということがされます。
何が目標か,どうなっていれば成功か,そういう意識をしっかり作って②全員参加のセッションに臨むということです。
そこのところのロールプレイを見ていて,確かに何かすごくエンパワーされたように感じました。
スキルとしては,「外在化」と「問題の影響のマッピング」ということが重要だということです。
外在化というのは,
“The person is not the problem.The problem is the problem.”
ということで,人にではなく問題に目を向けるようにするということです。
「嘘つき」と言うと,相手にその性格が備わっていることになりますが,「嘘があった」と言うとそのような事実を指すことになります。そのような言い換えということですね。
「問題の影響のマッピング」というのは,…ちょっとよくわかりませんでした。
ナラティブ・ミディエーションが最も実践されている分野は医療現場だということですが,今回のロールプレイの題材は,家の修理についての事業者と消費者とのトラブルという,ごく一般的なものでした。
医療事故に限らず,一般的なトラブルであっても,ナラティブ・ミディエーションは有用ですよ。というのがムンク先生のメッセージであったかもしれません。
実際,私も,司法書士会の調停センターで扱っている事件にも有用なのではないかと思えます。
最初,別席から入るというスタイルの違いが最も大きなものではないかと思いますが,この「別々のセッション」は,「全員参加のセッション」をするための準備であるらしいということがわかりました。
こういうスタイルは良いかもしれませんねえ。
少し手間はかかるかもしれませんが。
最後に,このセミナーで最も印象に残ったこと。
「外在化」をすると当事者に冷たくされたという印象を与えるのではないか?という質問があって,それに対してモンク先生が言われたこと。
「『彼は信頼できない!』ということに対して『不信感が大きくなっているんですね』ということは冷たい印象を与えるでしょうか?語感を損なわずに人から問題を切り離すことはできます。」
いかに相手に寄り添っているか,なんだなあ。
国語力も問われる。プロの仕事だ。